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流通業界、市場変化の臨界点(25)

2015年8月25日07:00

非効率の効果(楽しければうまくいく)

 我が国の小売業は、規模に関わらず、ある時期から効率化、標準化という定型拡大に入った。もちろん、より効率的に安く商品を提供することは、悪いことではない。そのことによって、競争相手とまったく違ったメリットをお客に提供できれば、何の問題もない。

 しかし、この標準化には良い面と悪い面がある。言うまでもなく、人間は多様性の生き物である。多様性とは、いろいろな視点、感情、計算を持つということである。店の看板が違うだけで、どこに行っても同じように同じものを同じ値段で売るという光景には満足しない。しかしながら、我が国の小売業は徹底して同質化を進めてきた。とくにGMS(総合スーパー)は十年一日のごとく、飽きることなく同じような売り場をつくり続けてきた。加えて、売れないがゆえに値下げを繰り返し、価格的信用もなくした。

 その結果、二重にお客の支持を失ったのである。

 そんなGMSだが、そのスタート時点では爆発的なお客の支持を得た。単純比較で言えば、現在の3倍のお客が売り場に来てくれたのである。店が増え、人材も育ち続けて、企業は成長を続けた。

 しかし、お客は進化し飽きるものである。その顧客の嗜好変化についていかない限り、店は衰退する。衰退すれば、企業もそこで働く人材も輝きを失う。輝きを失うということは、色あせるということである。感動や楽しさが消えることでもある。感動のないことやモノに、お客はお金を出すはずがない。衰退企業のおしなべての特徴は、一言で言うと「楽しさも感動もない」ことである。

 

まず隗より始めよ

 米フォーチューン誌が、「働きがいのある(あるいは働きやすい)会社ベスト100」というランキングを毎年発表している。これは、そこで働く従業員の意見や待遇などを基に、ランキングするものだ。毎年、上位に顔を出すのは、グーグルなどのIT企業や金融、コンサル会社だが、そのなかに割って入るスーパーマーケットがある。

 ウェグマンズやホールフーズ、ナゲット、パブリックスは、毎年、常連としてそのなかに顔を出す。しかし、それ以外の企業は、ランキングに出てこない。その理由を考えてみよう。

 日本同様、アメリカも小売業の待遇は、必ずしも恵まれているというわけではない。そんななかで、従業員が自分の会社を支持するのは報酬だけでなく「働く楽しさと自分の店に対する誇り」というところにある。

 ホールフーズ以外は非上場であるが、彼らの共通点は、何と言っても売り場が楽しいということである。より良い売り場づくりのための、現場の権限移譲も進んでいる。自由に楽しい売り場づくりができると、そこに置く商品にもこだわりたくなる。そうなると、お客もそこに積極的に興味を持つようになる。その結果、従業員とお客のコミュニケーションが密になる。従業員はますますお客のために何をすべきかを考え、さらに店は楽しくなり、お客の感動も大きくなり続ける。

 そんな店への、お客の信頼と評価は高い。そして、そのリスペクトは当然、従業員にも向けられる。従業員の誇りと責任感はますます強くなり、顧客に役立つための自己研鑽を積むことにもつながる。

 

(つづく)
【神戸 彲】

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