流通業界、市場変化の臨界点(19)
時々、今やアメリカに学ぶものはないとか、アメリカの事例を学んでも仕方ないという声を聞く。とくに小企業の経営者に多いのだが、このような経営者に共通するのは、汗以外に価値観を持たないという姿勢である。このような経営者のもとでは、絶対に人財は育たない。
あることを学ぶということは、違うことにも気が付くというメリットが生まれる。学びの相乗効果である。また、店舗を眺めただけでは、わからない部分もたくさんある。
上のシートは、その売上が10兆円を超えたコストコの数値である。このシートで見て取れるのは、販売管理費の低さや売上の成長だけではない。
かたくなな経営姿勢である。売上の増加にもかかわらず、利益の増加が少ない。既存店舗の売上は大きく伸び、それにつれて販売管理費の額も膨らんでいる。しかし、率はほとんど変わっていない。このシートから見る限り、コストコには「変えないものは絶対に変えない」という強い意志がある。
たかだか4,000アイテムしかない売場で、一般的に言えば決して買いやすいとは言えない大容量の商品を世界中で確実に売り続けるというのは、半ば驚異的である。販売管理費や粗利率を猫の目のようにいじって辻褄を合わせようとする我が国の一般的な経営とは、確実に一線を画している。安く仕入れたものは、それを利益ではなく販売価格に反映させ、競合店のシェアを奪う。
コストコの純利益率は、欧米の企業にしては極めて低い。しかもその利益は会員収入がほぼすべてである。しかし、コストコの売り場を見る限り、10%の粗利益率で運営している価格には見えない。はっきり言って『安くない』のである。しかし、世界各地の店でコストコは同じような結果を出す。ウォルマートの海外店舗が国内のそれに比べて著しく売上が低いのとは、対照的である。
(つづく)
【神戸 彲】
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