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流通業界、市場変化の臨界点(10)

2015年7月30日14:51

<何が粗利益(売上総利益)を低下させたのか>

 小売業不振の1番の原因は、過剰店舗にあることは間違いない。食品スーパーマーケット(SM)のピーク時には450万円に近かった年間の坪当たり売上は、ここ数年、270万円前後と低迷している。これは、その売上が40%も減少したということであり、経営努力の範囲をはるかに超えている。

 経営にとって一番深刻でもっとも大きなダメージを受けるのが、売上の減少である。そして、売上の減少の回復は、一般的に価格戦術によってなされる。
 しかし、この方法は結果的に粗利益率の低下は招くが、売上の回復にはつながらない。たとえば、5%の値下げをすれば5%以上の売上増がなければ粗利益率の回復にはつながらないということであり、思うように売上が伸びない場合は、その売上を伸ばすためにさらなる窮地に自らを追い込むことになる。この構造に陥ってしまうと、利益なき安売りに歯止めが利かなくなる。

<規模のメリットというより生き残るための手法>

rekisi 本業でという見方はもはや成立しないSMも、すでにその領域に入っている。

 シートは、高度成長期から今日までのチェーンストア加盟企業の店舗面積と売上の推移である。
 その昔、SMは企業規模の大小を問わず、俗に言う“ブラック企業”だった。モノ不足の時代だった。商品は、文字通り飛ぶように売れた。そのようななかでは、朝早くから満足な休みもなく働くというのが常識だった。そうすることで企業はみるみる大きくなり、ポストも生まれた。いわゆる働きがいのある時代だった。若者の上昇志向も強かった。人より多く仕事をするのが誇りであり、昇進への道だった。

 イオンもダイエーも同じように人を大量に採用し、規模拡大を続けた。それまで業種店を中心とする零細小売店が高い値入で売っていた商品を、20~30%も安く売ったのである。その結果、坪当たりの売上が1,000万を超すという店も珍しくなかった。坪効率が良いうえに長時間、超過勤務手当なしで働く若い力は、それらの小売企業を大企業に育てあげた。
 しかし、モノ不足の社会はある時からモノ余りと言われる時代になった。さらに十把一絡げ、同一品大量消費から十人十色、個性重視に消費内容が変化していった。効率の良い大量単品の時代が終わったのである。

 労働環境も変わった。労基法による規制も、以前とは比べ物にならないほど厳しくなった。そのため、坪効率の低下と相まって生産効率が極端に低下したのである。バブルの崩壊がそれに拍車をかけ、さらにリーマン・ショックや高齢化、非正規労働者の増加といった消費に対する抑制要因も重なった。大手のほとんどは、この変化に対応できなかった。
 その結果、ごく一部の専門店を除く大部分の大型小売企業は、その体力をみるみる消耗させた。そしてその構造は、今も変わっていない。

(つづく)
【神戸 彲】

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<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。現在は、流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を務める。

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