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流通業界、市場変化の臨界点(8)

2015年7月28日07:00

<トップダウン(意思決定)とボトムアップ(連携と情報の共有)>

kaigi2 「自分には、高邁な哲学や理想はない」――と謙遜する横山会長。その謙虚さゆえに、グループメンバーの信頼は厚い。規模効果だけではなく、皆で心と技術力、発想力を合わせて、より強い企業体をつくるという“共存共栄(強存強栄)”のポイントが、そこに見て取れる。

○企業文化、自主性は尊重する
○経営陣にはそのまま残ってもらう
○営業スタイルは変更しない

 これが、企業統合にともなうアークスの基本方針である。もちろん、広報や既存インフラの活用、改善など、効率化が可能な部分は積極的に取り組むのは言うまでもない。

 アークスの組織的合意は10社、20人が参加する経営会議で決定される。ここは大きな案件に対する意思決定の場であり、情報交換の場でもある。重要なグループの戦略が諮られ、それに対する意見が集約される。さらに、参加企業の成功、失敗事例が発表され、その共有が行われる。20人という限られた会議の構成人数から見て、会議では中身の濃い戦略的かつ現実的な問題が十分に検討されることが推察できる。

 横山会長は「八ヶ岳連峰経営」の基準はロッチデールの原則という。ロッチデールとは、1800年代半ばにイギリスのランカシャー地方で始まった活動で、労働者の暮らしを守るための公正、公平を掲げた生活協同組合の始まりとも言われ、1937年にパリで正式なものとしてスタートした。

○情報公開
○傾斜配分
○民主的運営
○政治的中立
○教育の推進

 以上が、その基本原則の主なものだが、この考え方のもとに公平と公正を旨として、経営陣を“縦糸”、従業員を“横糸”として、ヒト、モノ、カネをより効果的に運用して経営技術を磨くのだという。その理由は、資本や組織の論理だけで突き進むと、そこには必ず「人の争い」が起こるからだ。
 もう1つの狙いは、人財の創出である。小売りに限らず、人の採用、確保が大きな問題になっているが、とくに小売業はその業務内容と賃金から常に人財の問題に直面する。従業員の質次第で、顧客サービスは大きく違ってくるからだ。その従業員のサービスの質を高めるには、まず自分が働く職場と仕事に誇りを持ってもらうことである。そのためには、職場環境の整備だけでなく、上下左右の仲間と信頼に基づく協力が不可欠になる。そんな環境をつくるのも、経営者の仕事である。

 そのような考えを象徴するように、アークスには「Arcs be Ambitious and Overcome」を略した「AAO(エイエイオー)プロジェクト」というチームがある。これは、将来の重要な経営課題になるオムニチャネルやネットスーパー、金融などを俯瞰した準備チームである。直近の課題だけではなく、将来の経営環境の変化にも適切に対応しようというボトムアップ組織で、いろいろな部署から集まった混成チームでそれにあたっている。ここにも、相互補完を基本にした上下、縦横の連携が見て取れる。

(つづく)
【神戸 彲】

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<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。現在は、流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を務める。

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