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流通業界、市場変化の臨界点(2)

2015年7月17日10:53

<規模はすべてを癒さない>

aeon_jusco イオンの売上規模は1987年の8,000億円から、昨年度は7兆円を超すところまで成長している。しかしながら、利益の面で見ると、規模の拡大が利益に貢献しているとは言い難い。もちろん今後、この規模拡大が大きな収穫をもたらさないとは言えないが、現状で見ればメリットはほとんど見てとれない。とくに小売り部門においてはその傾向が強く、今後、その改善が劇的に進むとも思えない。この傾向は、とくにイオンに限ったことではない。従来型の大型小売業全般に言えることでもある。
 そして同じような傾向は、それまで健全と言われた食品スーパーの世界にも、暗い影を落とし始めている。坪効率の低下による収益性の悪化である。

 もともと販売管理費のほとんどが固定費と言われるスーパーマーケットは、組織全体の売上の大きさでなく、坪当たりの売上次第でその収益性が大きく違ってくる。それだけに、異業態と同業態競合が入り乱れての厳しい競合状態にさらされ、坪当たり売上が限界値を切りつつある現状において、健全な収益性を確保するのは容易ではない。

 そのようななかで生まれ始めたのが、地方の連合という新たな共同化である。地方の有力企業を中心に、地域シェアを高めながら大手に対抗するというこのやり方は、規模だけでない違ったメリットも模索しながら、ジワリと広がり始めている。

 小売業界でよく言われるのが、規模拡大によるコスト削減メリットである。コストのなかで一番大きいのは、言うまでもなく仕入れ原価である。もともと粗利益率に比較して販管比率の高い小売業の経常利益率は、極めて低い。もし、規模拡大により仕入れ原価が1%でも下がれば、そのメリットは大きい。もちろん、物流費も同じである。規模を拡大して原価と物流費を下げる。誰もが当然のこととして考える、経営改善の基本である。
 しかし、考えてみてほしい。小売りに商品を提供するベンダーと呼ばれる卸の利益率は、最大手でも1%を切る。
 メーカーも大同小異である。物流コストの3~4%もそれを削減するのは、至難の業である。規模が拡大すると言っても、彼らにとってまったく新しい市場が生まれるわけではない。言うなれば、成長のない市場を取ったり取られたりということでしかない。結果として、規模拡大による大きな原価の引き下げは難しいということになる。

 PB(プライベート・ブランド)にしても同じである。一時、小売がこぞって取り組んだ価格型のPBは、今やその存在感は見る影もない。今、PBで脚光を浴びているのは、「品質型」である。しかし、品質型が受け入れられる業態は少ない。とくに日常品が中心のスーパーマーケット業態に、それを求めるお客は極めて少ない。
 最大手のPBでも5,000品目で、年間販売額は7,000億円程度。1品目1億円あまりの額にしかならない。これでは、商品利益が出るとはとても思えない。まして価格訴求型のPBではなおさらである。つまり、単純な規模の拡大ではメリットが生まれにくいと考えるのが妥当だろう。

 メーカーやベンダーが考える規模のメリットも、小売りのそれとはいささか趣が違う。メーカーが考える規模とはあくまで「地域シェア」の問題である。ざっくり全国と言っても、その基本はあくまで地域シェアの拡大であり、メーカーの地方営業もそのスタンスに立っているはずである。欧米のように小売り大手トップ数社のシェアが軽く50%を超す場合は別だが、大手5社のシェアを合わせても20%あるかないかの我が国では、大手だからといって、メーカーが大幅に原価を引き下げるというのは考えにくい。加えて、日本の消費市場の中心は、今でもNB(ナショナル・ブランド)志向である。もちろん規模のメリットは0ではないだろうが、たとえ、それが手にできても、それだけで経営が劇的に改善することはない。

(つづく)
【神戸 彲】

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<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。現在は、流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を務める。

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